「将来の電力需給プラットフォーム化を想定したENICの取り組み」

FastDRを対象とした産業分野における需要家資源の活用ポテンシャルとコストメリット

 従来、需給逼迫時の対策として、需給調整契約などのデマンド・サイド・マネジメント(DSM)が行われてきたが、ITの進歩や電力市場整備に伴い、需要家のエネルギーマネジメントシステムを通じたデマンドレスポンス(DR)が実現されつつある。2017年度の冬は東京電力管内にて、2018年度の夏は関西電力管内にて調整力公募で調達されたDR{電源Ⅰ’(イチダッシュ)}が実際に発動された。当所では、海外の電力系統運用者であるISO/RTOにおける高速デマンドレスポンスプログラム「Fast DR」活用動向の調査や、我が国での「Fast DR」向け需要側リソースの活用方法やコストメリットの評価を行っている。

米国の事例

 米国のISO/RTOでは、先行して2000年代よりアンシラリーサービス供給に需要家資源を登録可能とする制度が定められているところが多く、「Fast DRリソース」として多くの需要側資源が活用されている。

 北米最大のISOであるPJMの周波数調整市場について、リソース種別に、そのパフォーマンススコア(PS)と呼ばれる、0~100%の値で示される成績係数の平均値が公開されている。大型蓄電池を主なリソースとする蓄エネルギー装置はガスタービンと同様90%を超える高い評点を得ている。近年、登録数が急激に伸びている電気温水器をはじめとした需要側リソースは、水力発電と遜色ない評価(80%以上)を得ており、系統運用への貢献度は総じて高いといえる。

 テキサス電力信頼度評議会(ERCOT)の予備力市場では、ピーク需要の5%にあたる400万kw規模の予備力登録があり、そのうち100 ~200万kw程度が市場で落札されている。主なリソース種別は、石油採掘・精製関係やガス製造(窒素など)、電炉であり、これらの業種だけで需要家資源総登録規模のほとんどを占める。日本での適用性を考える上では、産業構造上、量を期待できるリソースは少ないものの、ERCOTがこれほど多くの需要側リソースを集めることができたことは注目に値し、我が国で同様の状況になるための条件整理を試みている。

「Fast DR」のコストメリット評価

 将来、再生可能エネルギー電源の大量連系によって、周波数制御や需給バランス調整のための調整力必要量が増え、蓄電池やDRなど従来電源以外の調整力が必要になる。当所では、再生可能エネルギー電源大量導入時代に、どのような調整力資源を開発すべきかを評価できる手法(柔軟性資源計画モデル)を開発している。

 検討事例として、再生可能エネルギー電源が大量導入した、ある電力供給エリアを対象に、蓄電池(ナトリウム硫黄、リチウム)とDR資源(家庭用ヒートポンプ給湯機と産業用プロセスの需要能動化)を調整力資源に含めた場合のシステム全体コストを評価し、火力と揚水式水力のみが調整力資源である場合(基準ケース)と比べて26%程度のコスト低減効果があることを明らかにした。

 また、配電システムに連系しているリソースが系統運用の信号に一斉に反応すると、電圧変動など局所的に悪影響を及ぼす可能性もあり、これらの評価を今後検討する予定である。

連載一覧
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本コンテンツは、電気新聞連載寄稿「電力プラットフォームの将来(2018年7月・6回連載)」にて、ENICの取り組みを紹介した記事を加筆・修正したものです。

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