「将来の電力需給プラットフォーム化を想定したENICの取り組み」

配電線電圧管理に資する需要家資源の協調制御技術

需要家機器の協調制御手法の開発

 太陽光発電(PV)の増加に伴い、逆潮流による配電線電圧の過度の上昇が懸念され、これまで種々の対策技術が開発、実用化されてきた。将来的には、蓄電池や電気自動車(EV)の一斉充電などによる新たな電圧変動問題も顕在化する可能性がある。これまで電力会社では、PV対応を含め配電線側の対策として、自動電圧調整装置(SVR)や無効電力補償装置(SVC)などの各種電圧調整装置の設置や改良を行ってきた。

 一般的に、長さが数km~数十kmに及ぶ配電線では、需要家間での消費電力パターンの違いに加え、天候によってはPV出力パターンも地点によって異なるものとなる。これらにより、PV大量連系時では電圧変動特性が地点間で大きく異なるケースが想定される。このため、配電線側の電圧調整装置での一括制御に加え、PV、蓄電池、EV用の各パワーコンディショナー(PCS)などの利用を考えた、局所的な電圧変動に対する対策も必要といえる。

 現状、PCSの対策として、PVを対象に力率一定制御手法(常時、出力有効電力に比例して無効電力を出力)が系統連系規程により規定されているが、今後、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)終了などに伴い、PV出力電力を自身で消費する自家消費型に移行した場合、出力される無効電力が過剰となり、配電系統や2次送電系統で電圧が過度に低下するなど、新たな課題が生じる可能性がある。

 そこで、当所ではより少ない無効電力で電圧調整を図るためのPCSの協調制御手法の検討を進めている。その一つとして、配電線の需要家を低圧配電線単位などの複数の需要家群に分け、群ごとで通信により、連系点電圧値、出力電力、無効電力、連系位置などの情報を共有しながら、自律的に無効電力を最適配分する手法を開発している。これまでに、低圧配電線を対象にした実験とシミュレーションによって、快晴日の例で現状の力率一定制御運転と比較して1日の平均無効電力値が約70%低減される(図参照)など、有効性を確認している。

需要家機器の無効電力を自律的に最適配分する手法の効果解析例

需要家機器の経済的成立条件の検討

 無効電力による電圧調整について、蓄電池やEV用PCSなどの需要家機器を利用した場合の経済性の検討も行っている。系統側に機器を設置するよりも、需要家機器に調整機能を付加する方が安価であれば、需要家機器活用の経済的メリットが生じる。当所では、これまでに系統側に設置する機器としてSVCを想定し、需要家機器に調整機能を付加する場合との経済性を比較している。

 本経済性分析では、PVが分散して連系している配電線モデルを対象にシミュレーションを行い、需要家機器が電圧上昇抑制面で最適に配置された場合、ランダムに配置された場合など、複数の配置パターンについて、SVCに対するブレークイーブンコスト(この価格以下で需要側機器に電圧調整機能を付加することができれば、SVCを用いるよりも経済的に有利となる)を算出した。今後は、前述したような無効電力を最小化する手法の経済性評価を行い、実用化に必要な条件を明らかにする予定である。