動画配信サービス・ネットフリックスにどう学ぶか?

 ネットフリックスの連続ドラマをつい夜遅くまで見てしまう。ネットフリックスは月額千円程で番組見放題、おまけに自分に合った番組を勧めてくれる。動画を沢山見る人にとっては店に行きビデオをレンタルするより格段に便利で安価だ。
デジタルコンテンツの主流は、「モノの販売」からサービスそのものを提供する「サブスクリプション」に移ったようだ。

サブスクリプション

 サブスクリプションとは、概ね、①顧客と継続的に繋がり、②モノだけでなくサービス体験の提供を通して、③顧客が求める成果を把握し提供するビジネスモデルのことである。料金形態は定額制のイメージが強いが、従量制の場合もある。個々の顧客が受けるサービスの質を継続的に改善し、顧客満足度を高めることができる。

 IoTの技術革新により機器の稼働状況はもちろん、利用者の望む成果の達成度合いをモニターすることも可能になっている。これにより製造業でも、モノの販売から、IoTを活用したサブスクリプション・サービスの提供へと移行しつつある。例えばコマツは建機を売るだけでなく、その建機がどう動いているのかをリアルタイムにモニターし、データを分析している。これにより部品故障を高い精度で予測し、機器の非稼働時間を短くするなど、工事全体の生産性を改善するサービスを提供している。

 自動車メーカーもサブスクリプション・サービスを始めた。ボルボは2025年には製造車数の50%がサブスクリプション型で提供されると予測する。

電気事業とサブスクリプション

 電気事業は元来、長期にわたり継続的に製品(電気)を販売するビジネスである。昔は電力の利用先は明かりと動力であったが、今は快適な職住環境や、娯楽・知的 活動の基盤、家庭生活の質的向上、環境対応と多様化している。しかし、従来の電気事業者の意識は、モノとしての電気の販売に向いたままだった。顧客との接点が少なく、販売した電気の使い道はわからず、顧客のニーズや満足の根源(顧客インサイト)についての理解が不足していたのである。近年、スマートメータを始めセンサー類の普及や、解析技術の進歩により、コマツやネットフリックスのように、電気事業においてもサブスクリプション型の顧客との関係構築が可能になりつつある。

顧客インサイトの理解向上に向けた取組み

 顧客インサイトの理解向上においては、顧客が電気を使う目的を知り、顧客の求める成果を数値化して理解し、適切な顧客接点を構築することが重要になる。ウェブサイト、コールセンターを通じて顧客の声を聞き、スマートメータデータから利用された電気機器を推定(簡易用途分解)すれば、顧客の電気の使い道を深く理解できる。快適性や温熱特性、環境性などを計量化できれば、顧客が求める成果に即した新たなサービスを提案できる。また、こうした顧客インサイトから創出される新サービスは、サブスクリプション型の顧客側機器や契約形態を通じて提供される。

 当所では、電力需要の簡易用途分解技術や行動科学などの研究を通じ、顧客インサイトを得る解析手法や、顧客接点となる新たな機器を開発している。

デジタルプラットフォームと解析技術

 ネットフリックスは、顧客一人ひとりの番組の嗜好傾向を始め、どこで巻き戻したかなどの詳細行動を分析し、番組の推薦や新番組の制作に反映しているという。サービスを機動的・継続的に改善するためには、顧客行動データをいかに収集するかはもちろん、その上で顧客インサイトを得るためにどう解析・予測するかが鍵となる。その基盤となる社内外でのデジタルプラットフォームの構築も必要だ。またデータサイエンティストの参画やアジャイル(機敏)な取組が可能な組織体制も重要となる。

最後に

 ネットフリックスに象徴されるサブスクリプションは、定額制、従量制の枠を超えて、デジタル時代の顧客関係構築の新たな姿を示すものである。電気事業分野においても顧客との新たな関係を構築する取組が活発になっている。サブスクリプションの切口で、一度、眺めては如何だろう。

電気新聞ゼミナール連載188回 (2019年8月14日掲載)


根本 孝七/ねもと こうしち
略歴 エネルギーイノベーション創発センター所長
1984年度入所 専門は電気工学 博士(工学)

山田 智之/やまだ ともゆき
略歴 エネルギーイノベーション創発センター カスタマーサービスユニット
需要デザイングループ 主任研究員
2018年度入所 専門はエネルギーシステム分析